シュンラボストーリーズ第1章:第21話 盛者必衰ならぬ乗車必衰!? その⑥

どうもシュンクボです。

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シュンラボストーリーズ今日も元気よく参りましょう♪

※この物語は自伝的フィクションです。シュンクボの体験をもとにしてはおりますが、時間・場所・登場人物の設定など、実際の事実とは異なる場合もあります。予めご了承ください。

 

前回までのあらすじ

駆け込み乗車の際、

ショルダーバッグを電車のドアに挟んでしまったシュンシュンは、

降車駅までドアが開かない状況にあわてて、

隣の停車駅のホームの駅員に急いで事情を説明した。

ところが、駅員から「どの車両に挟まってますか?」と聞かれると、

どの車両だったか思い出せず、またあわてる始末だった。

 

「どの車両だ、どこだ? 俺のバッグは・・・」

 

シュンシュンはあたふたした。

ホームの駅員は、

あたふたしているシュンシュンをさらにあたふたさせないように、

じっとシュンシュンのあたふたした様子を見守っていた。

シュンシュンは、

もといた後方にいちおう一目散に駆け出した。

だが、どこの車両かわからないから、

検討のつけようがないのではないか、と途方に暮れてしまった。

その時、

「あの人だかりは?」

と、ホームの駅員が指をさした。

 

見ると、

とある車両に人だかりがやけに出来ていて、

物珍しそうにドアの方をじろじろ面白そうに見ている。

他でもない、シュンシュンのワインレッドのショルダーバッグが、

電車の左側ドアに、珍妙にぶら下がっているのを、

乗客たちが興味深そうに観覧していたのである。

そう、それはさながら、

現代アートの実験展覧会のような状況を呈していた。

シュンシュンは、小説家になろうとして失敗した。

一次予選にすら通らなかった。

あれほど丹精込めて作り上げた小説が、

一次予選の読者にすら興味を全く持たれることもなく、

誰からも読まれることもなく、

出版社の不合格シュレッダーに、冷酷なまでに容赦なく裁断されてしまった。

ところが、

シュンシュンのアーティストとしての才能は、

こんなところで、

こんな流れで、

こんな突拍子もない形で、

発揮されてしまったのである!

彼自身の天然間抜けな性格によるアクシデントがきっかけとなり、

彼自身の持ち物が、

思いもかけぬ場所で、

思いもよらぬ現代即興アート展覧会を開催する流れを呼び、

予想外の観覧者を呼び寄せてしまったのである。

もしシュンシュンが、

後世名を残す偉大なアーティストになった暁には、

後世の偉大な芸術批評家は、

この日のこの出来事を、

「シュンシュンのアーティストとしての幻の傑作は、何を隠そう、『JR快速線上のマルイのワインレッド、≪ベルリンの壁の東西≫になぞらえて』である」

とシニカルに断言するかもしれない。

 

シュンシュンは、

何はともあれ、

自分のショルダーバッグが見つかったことにホッとして、ドアに駆け付けた。

そして、駅員に付属の手動解除ボタンでドアをこじ開けてもらい、

無事愛しのマルイのワインレッドのショルダーバッグを、

まるで迷子の我が子を抱きしめるような気持ちで回収することに成功したのである。

その様子を見守っていた人たちも、

遅延行為を働いたシュンシュンに対して、

特に苦情も文句も言わずに、物静かに散らばっていった。

当初の物挟みの瞬間に立ち会わせた女性二人組も、

シュンシュンが周囲の人たちに謝罪した際に、

「珍しい光景が見られました。ありがとうございます(^^)」と楽しそうだった。

 

シュンシュンは、人生で初めて電車内遅延行為を働いてしまった。

故意ではなく天然だったが、申し訳ない思いだった。

だが、思いもかけない好意的な反響に、

意外な感謝の念が、周囲の乗客に対してこみあげてきてもいた。

 

今日はこのへんで(^^)

本日もご覧くださり、ありがとうございました!

シュンクボ!(^^)!