シュンラボストーリーズ第1章:第11話 アルバイトでの葛藤
どうもシュンクボです。
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※この物語は、実体験に基づいていますが、登場する人物や場所や時間など、プライバシーの観点等を考慮して設定や事実が変更されている、言わば自伝形式のフィクションです。予めご了承ください。
小説新人賞に落選したシュンシュンは、リョウ君に励まされた日の夜、リョウ君と共に通勤電車の車両故障に巻き込まれてしまい、踏んだり蹴ったりの気分を味わった。
振替乗車時に、また新人賞に再投稿するのかとリョウ君に聞かれたシュンシュンは、落選したショックを引きずりながらも、まだ諦めたくない気持ちだけは残っていることを確かめて、帰宅したのだった。
翌日、シュンシュンは、昨日の帰宅疲れを引きずり、小説落選の事実はもっと引きずりながらも、本屋のアルバイトに出勤した。
以前も書いたが、シュンシュンに割り当てられた主な業務はレジ接客である。
本屋と言えば、元AKBの渡辺麻友や女優の稲森いずみが出演していたテレビドラマ『書店ガール』でのやり取りのように、本の陳列や在庫管理をどうするか、といった業務を一般的にイメージする人が多いかもしれない。
だが、シュンシュンに割り当てられた主な業務は、レジ接客だった。
本屋の醍醐味である本棚の業務は他の先輩や同僚が担っている。
シュンシュンには任されていない。
彼の業務は≪書店レジ接客≫である。
仲のいいリョウ君は文庫の棚を任され、立派に書店ボーイな業務をこなしている。
シュンシュンには書店ボーイらしい業務は任されていない。
彼の業務はあくまで≪書店レジ接客≫である。
シュンシュンの勤続年数はすでに入れ替わりの激しい職場にあってはベテランの領域に近い。
彼よりベテランの人たちの多くは、棚の整理や、本の搬入現場など、最も本屋業務に相応しい業務に配置換え移動していた。
だが、シュンシュンには本屋をイメージさせる業務は任されていない。
あくまで彼の主な職務は、他の業界にもあるような≪レジ接客≫である。
そう、シュンシュンにとっては、≪本屋のレジ接客≫こそが、
周囲から求められ、自分自身も「これだ、これこそが仕事なのだ」
と、日々職務に励みながら実感している業務なのである。
自他ともに適職とされている本屋のレジ業務なのだが、
今のシュンシュンはあいにく青息吐息である。
一応接客らしい接客は続けることができた。
けれど、
今までの経験とルーティンワークから辛うじて業務を遂行できているにすぎなかった。
ある昼過ぎの時間帯、
団塊の世代の御年配のお客様から、
クレジット払いを求められた時である。
カードを読取専用機に挿入し、暗証番号を入力して確定ボタンを押すよう、お客様にお声がけをし、お客様もそれに従って入力した。
だが、
入力するタイミングが早過ぎたのと、
読取専用機が年季物だったせいで、
暗証番号を読み取らないまま確定ボタンを押す形になってしまった。
これは、クレジット決済を、
暗証番号入力ではなく、≪署名≫で行うのと、全く同じ流れになる。
つまり、
お客様は暗証番号を入力したにもかかわらず、
≪署名≫でクレジット決済をしなければならない。
お客様にとっては二度手間である。
このように、
お客様に暗証番号を入力するよう促しておきながら、
署名でのクレジット決済になってしまうケースは、
シュンシュンの職場では時々起こることだった。
いつものシュンシュンであれば、
こうした事態になっても、それなりに落ち着いて、
お客様に謝ったうえでご案内ができていた。
だが、
今のシュンシュンは、
小説新人賞に落選してしまったシュンシュンである。
最終選考はおろか、一次選考すら通らなかったシュンシュンである!
心の底で、
グレン・グールドが破天荒に弾く、ベートーベンのピアノソナタ『悲愴』が、
不協和音のように流れ続けているシュンシュンである!
シュンシュンは、
お客様が入力タイミングを早まってしまった焦りも相まって、
ついうっかり、
「恐れ入りますが」「お手数ですが」といったクッション言葉をはさまないまま、
おまけに状況を落ち着いて説明することもはしょり、
軽率にも、
不遜にも、
「署名での決済となりなすがよろしいでしょうか?」
と、お客様に唐突に切り出したのだった。
御年配のお客様は、
「えっ!?」
と驚いた。
かくして・・・
グレングールド奏するペートーベン『悲愴』の重苦しいムードは、
シュンシュンの軽率過ぎる言動によって、
シュンシュンだけでなく、
彼が応対したお客様の心の中にまで、
だんだん暗雲の如く、
深く垂れこめていった。
どうなるシュンシュン!?
続きはまた明日(^^
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シュンクボ(^^